運送屋の仕分

業界最低水準という噂の某運送屋へ深夜仕分けバイトに行ってきた。初日で辞めることにした。一日で辞めるバイトは初だ。
ベルトコンベアを次々と流れてくる荷物、伝票に書かれている数字を読み、自分の担当の番号だったら脇道のローラーコンベアへ引いてゆく。…最初の一時間はこれだけだった。重い荷物だろうと、横に逸らすだけだからなんとかなった。それに先を見てすぱすぱ引いていく単純作業はある種のトランス状態に入り、それがわりと気持ちよかった。……そう、これだけなら、よかったんである。
最初の1時間が終わったあと45分の休憩。変な時間に休憩になるなと思いつつ、これからどうなるのか聞いてみる。と、「ここからがキツく、本番」「初日で10人中9人が辞めてゆく」というイヤな言葉が返ってきた。
そして話のとおり確かにここからが本番だった。まず数字が汚い手書きに変わった。13とBの区別や22と28の区別も付かない程度のものになった。まあこれは暫くしたら慣れた。
が、それに加えて仕事量が格段に増えた。ローラーコンベアへ引いたあと、さらに細かい住所ごとに仕分けて荷物を床へ積んでゆく。場合によっては小型トラックにも積む。
この作業がキツかった。重い荷物デカい荷物は奥の下へ、軽いのは手前に置いておく。聞くのは簡単だったが、実際にやるとパニックになった。
そもそも、重い。1x3mはあるデカい鉄板、5mはある木材、ガラス板、大型液晶TV、果てはマフラーやらガスボンベまでベルトコンベアに流れてきた。しんどすぎる。
ベルトコンベアから引く作業をし、自分の担当のローラーコンベアが満タンになったらさらに細かい仕分けをする。もちろん細かい仕分けをしている間にもベルトコンベアには休む間もなく荷物は流れてくる。
さらに担当となったローラーコンベアは2本。果たして一体どうしろというのか。正直、人員が最低でもさらに二倍必要だろこれってのが感想だ。さらにテキトーに調べたところ、ヤマトではおおまかな仕分けと細かな仕分(積込み)はそれぞれに一人づつ付けてやっているようだ。……これで時給1125は安すぎる。二人でやるべき作業を一人にやらせているのだから、この2倍はないとスジが通らない気がする、だが他のひと、その中には僕の4時間前から作業に入っていた人間もいたが、彼らはまったく息も上げずに働いていた。……まるで信じられなかった。
3時間後に休憩が入った。もうこの時点で息は完全に上がっていてパニックになっていた。最初なら簡単に持ちあがった荷物が、歯を食いしばらないと上がらなくなった。そもそも人並以下の体力の人間なのだ、僕は。…ここはもう今日だけにしよう。この時点で心は決まっていた。そしてこのまま逃げることを考えた。仕事の途中で逃げるなんてなんて無責任な話だと今迄思っていたが、このとき初めて気持ちがわかった。
でも、結局今日だけだからと、逃げるのを踏み留まった。…が、その3時間後、結局見兼ねたリーダーさんが「帰っていいよ」と言ってくれた。そのセリフがありがたかったのは、初めてだった。
某社の仕分をやろうとしている人は考えたほうがいい。体力に自信がある人間でなければ無理だ。本当にキツいことを覚悟するべきだ。…まあ某社は某社って名前で人間募集していないのだけれど。派遣屋っぽい名前での仕分けの募集は多分某社だろう。
家に帰ってきても、全身が痛くて暫く眠れなかった。12時間たった夕方の今でも、まだ膝が痛くてマトモに歩けない。太股も痛い。肩も痛い。
あと、大事なものを某社を使って送るのは絶対に止めようと思った。