恐ろしいのは

事故の前後の記憶はほとんどないが、ひとつだけはっきり覚えていることがある。

事故の数分前、信号待ちしつつ仕事のことを考えていた。既に九割がた納期に間に合いそうにない状況だった。「いっそのこと交通事故にでも」一瞬そんな考えがよぎる。「んな無責任な考えはあかん」とすぐに否定した、が、その数分後に俺は事故を起こした。

俺には事故前後の記憶がない。相手もぶつかるまで俺に気付いていなかったそうだ。だから、何故この事故が起きたのか、本当のところはまったくわからないのだ。

俺はわざとこの事故をおこしたんじゃないのか?

どうしても、そんな疑惑がのこってしまうのだ。